:日本ダービーを色眼鏡をかけずに回顧する
- 競馬エイトの松本ヒロシが「ウォッカの時のダービーのようなペース」と言っていたが、
- ちょっと違い気がする。いや、相当違うかもしれない。
- そもそもウオッカのダービーにおけるタイムはなかなか優秀(2:24.5)で、
- 今年のように13秒台まで落ちるようなことはなかった。
- また、2ハロン目が今年が11.3秒に対し、07年は10.9秒。
- 過去10年、良馬場で行われたダービーで2ハロン目が11秒台になったのは、
- 02年のタニノギムレットのダービーしかなく、
- もちろん、このレースで途中13秒台に落ちた200mはない。
- つまり、1000mから1400mの間をそれぞれ13.5-13.1で走ったダービーなど例がなく、
- 春の天皇賞にあっても13秒台までラップが落ちるのは稀だ。
- 今年のダービーはそれぐらいペースが遅かった。
- というか、上がらなかったと表現したほうが適当か!?
- G1で似ているレースを挙げるならば、ヘヴンリーロマンスの天皇賞秋と酷似している。
- さすがに古馬2000mのレースで13秒台のラップにはならなかったが、
- 1000mを62.4秒という超スローで、18頭中、8頭が33秒台、9頭が32秒台という、
- 異常な展開になった。
- そして超スローペースは波乱必至である。
- 確かに、ブンブン飛ばしていく馬は見当たらなかったが、
- コスモファントムが先行して、アリゼオが少しかかり気味に行くと予想していたから、
- ここまで遅くなるとは思わなかった。
- ヴィクトワールピサは後半、断続的に11秒台に走れる脚が大きな武器であるが、
- 800m〜600mでまだ12.4秒かかっており、
- 400m〜200mで10.8秒という、
- これまたありえないタイムでエイシンフラッシュとローズキングダムに出し抜けを食らったら、なす術なし。
- 岩田は「はじけなかった」云々言っているけど、ヴィクトワールの33.1秒の上がりは、
- この馬にとってほぼ臨界点だろう。
- ある程度流れてくれれば出遅れたペルーサも能力でカバーできたんだろうが、
- このペースで万事休す。
- ヒルノダムールも流れるペースが欲しかった。
- 一方、これだけスローになっても先行馬が残れないには、
- 先述のヘヴンリーロマンスの天皇賞と全く同じ。
- 既にピークを超えていたとはいうものの、タップダンスシチーはもっと残れてよかったし、
- バランスオブゲームあたりもここまで大敗するペースではなかった。
- ではなぜ超スローになっても先行馬が残れないのか??
- 端的に言えば、いくらスローになっても上がり32秒台の脚が使える馬は稀だから。
- タップダンスシチーはロングスパートで後続を萎えさせる戦法で、
- スローで逃げようなんて思っていない馬だった。
- ただ、往年の力がなかったタップにとって、
- スローで先行できる展開は願ってもないチャンスだったかもしれない。
- 結果として超高速の上がりに屈したわけだが。
- 今日のダービーの先行馬たちも同様で、
- アリゼオにしてもコスモファントムにしても想像していた以上に楽に先行できて、
- もしかしたらウイリアムズは「しめた」と思ったかもしれない。
- ただ、アリゼオにしてもコスモファントムにしても脚を温存できたとはいうものの、
- 33秒の前半で上がってこれる脚はなかったということ。
- 牽制が牽制を呼んだというか、
- ひとつの稀有なサンプルとして記憶に留めておきたい。
- つまり、これもまた「生粋の競馬」であることを。