:眠りに関する覚書




眠られ夜はたえがたい禍いである。健康な者も病人もそれを恐れる。というのは、健康な者は主として規則正しい睡眠によって健康が保たれるのを知っており、また病人の場合は、苦痛を和らげ元気を回復してくれる睡眠によって中断されないならば、長い暗い夜の時間の悩みと苦しいが、二倍にも感じられるからである。そしてありがちなことだが、その上に心配や悲しみが加わるならば、将来に対する恐怖が、体力も衰え気力もなえた人に、ちょうど「武装した兵士」のように襲いかかる。これに抵抗するのは困難であり、のがれることさえできない。 カール=ヒルティ(草間平作、大和邦太郎訳)『眠れぬ夜のために』


眠れないことは辛い?

 ヒルティは不眠は「できるだけ除かねばならない」としながらも、「不眠は内的生活にとくに大きな進歩をとげ、人生最上の宝を手にいれるために軽んじてはならない貴重な機会」とし、不眠を内省のために活用しようと呼びかけています。



はい、非常に辛いです

 センチメンタリズムに浸って夜眠らない人間がいることは確かだけれども、眠れないというのは大変な苦痛を伴います。特に小生のように、薬を頼らなければらなない程の人間にとっては。不眠に関する研究は精神医学のみならず、さまざなな方面からアプローチがなされているのは周知のとおりでありますが、性別、年齢、気質等によって原因は異なるし、「眠り」という、ある意味においてはつかみどころのない現象に対して、我々小市民が知り得るところは多くありません。しかしながら、小生は殊「眠り」に関しては、気を使い「眠る努力」を惜しみません。以下に小生が試みた眠るための努力を記すことにしましょう。



1.ベッドを変える

 実に基本的で、且つ、即効性のある対応策でありましょう。「寝る」行為自体ベッドもしくは床である以上、それらの素材を根本から見直すのはかなり妥当なところだろうと思います。ここで重要なのは――ベッドで言うなら――万能薬が存在しないように、万人に快眠を約束するベッドは存在しないということであるます。それは「ニトリ」などに行って、片っ端から実際寝てみるしかありません。すると自分にとって、どういうタイプのベッドが好みなのか方向性が見えてきます。そこで重要なのは、「今使っているベッドが自分にとって最良なものではない」と思い込むことであるます。やはり慣れているベッドの感触が残っており、それがベストだと思ってしまうと、今こうしてベッドを物色している意味がなくなってしまいます。もっといいベッドがあるはずだというメンタリティが大切なのであります。で、小生は昨年の11月くらいにセミダブルサイズの畳ベッドを採用しました。セミダブルってのは、寝癖の悪い小生にとって、蒲団がずり落ちないための措置。冬に寒さで目を覚ましてしまうほど不愉快なものはありません。そして、畳ってのはベッドの中では最上級の「堅さ」だと思うのであります。ここが一番重要視した点。つまり、やわらかくてふわふわしたベッドは小生にとって苦痛であります。これは個々人の好き/嫌いによるが、柔らかすぎるベッドは腰を痛めやすいと言われております。また、いぐさの香りは精神を安定させます。――ベッドは今使っているものがベストではありません。



2.蒲団の重量は?

 枕の高さも重要な要素ですが、同時に小生が大切にしているのは蒲団の重さです。はっきり言って、重ければ重いほどいい。旅行でホテルなんかに泊まると、超軽い蒲団であり、あれでは守られている感がありません。不愉快の極み。特に高価な蒲団ほど軽量であり、ずっしりと来る蒲団は逆に入手しにくくなっています。さて、小生 は大学4年間一度も蒲団を干さなかったww。もちろん、面倒ってのもあるけど、重みを損ないたくなかったからです。だから尋常ならざる汚さでも、気にしなかったし、気にならなかったのです。



3.読む本を変えてみる

 小生は前にも言ったように「ネクラ」な性格でありますから、読書はいわば人生そのものであります。非常に不器用な面もあるけれども、本を読むことに関しては5〜8冊の本を併読することができます。実際、今も村上春樹の『1Q84]』、三島由紀夫の『永すぎた春』、坂本龍一の『音楽は自由にする』、竹内洋の『学問の下流化』、川端康成『新文章読本』、あとはマンガを併読しております。ただ、竹内の本は別にして、他の作品は読み始めるとブレーキをかけるのが難しくなる*1。で、結局寝不足=不眠という、最も避けなければならない事態を招きます。一般的に、寝る前にあまり刺激を与えないほうがいいと言われております。当たりですが......。要するに、読書を含め、テレビ、映画、ラジオ、音楽など、わくわくしたり、驚いたりするのは厳禁であると。まあ、ご存知の通りです。しかし、寝る前ほど読書他に適した時間はないのも事実でありましょう。小生は12時には眠りたい。本を読む時間も確保したいから、逆算すると11時には蒲団に入りたい。そして1時間は自分の好きな本をとことん楽しむ。ただ、12時過ぎたらとてつもなく難解な本を読むことです。「少し理解できる」ものではなく「少し理解できない」書物であります。ショウペンハウエルやルソーあたりだと、わずかに理解できる箇所があるから適当ではない。例えば、ウィトゲンシュタインあたりは妥当なところでしょう。あるいは聖書でもいい。呪文のように、ぐだぐだとわけのわからないことが書かれていると、眠気は自ずとやってきましょう。



4.敢えて眠らない

 最後は結局これしかありません。眠ることを諦める。明日はたぶん辛い1日になりましょうが、眠ろう眠ろうという心性は決して健全な状態であるとは言えない。だったら、敢えて眠らないという選択肢が出てくる。そこで何をするか?既に眠ることを諦めたのだから、ランニングしたっていいし*2、オナニーに耽ってもよかろうと思います。小生の場合、まあオナニーもしますが、だいたい真っ暗な部屋で、このようにパソコンに前に鎮座し、そしてこのように意味の無い文章を綴ることが多いと言えるでしょう。



5.荒治療ですが、、、

 小生の部屋に時計はありませn。いや、あるにはあるますが、電池が抜かれており、8時42分で止まったままになっている。結局、秒針の音に耐えられなくなったのであります。音を徹底的に排除するのも一考。更に考えなければならないのは「光」であります。小生の学生時代を知る人間は極めて少ないが、住んでいたアパートに窓に段ボールを張り付け、一切の光線を遮断したことがあります。それを約半年続けました。当然、昼間にも関わらず、光という光は入って来ず、真っ暗。常に夜の状態にしておき、心を落ち着けることに徹するのが目的でありました。光に当たらないと体内時計が狂うと言われており、確かにその通りでありましたが、自分が今最も心地よいと感じる空間は、自らが欲した空間であり、最良の空間でありましょう。



6.祈り

 あとは、眠れるように祈りましょう。


気の短い者は、争いを引き起こし、耐え忍ぶ人は、いさかいを静める。 『聖書』箴言よりソロモンの知恵の言葉


*1:まあ、村上の本は駄作ですけどww

*2:小生はそんな疲れることはしません。虚弱体質ですから。