:POG私論




毎夜床に入らば、まず当日行いたる所業の著しきものを反省せよ。いわくなさざるべからざる事を当然になせしや。いわくいかなるよき事をなすべきを怠りしやと。しかしてこれを数え終りたるのち悪しき事はつとめてこれを除き、よき事は喜びてこれをかさねよ。 ピタゴラス


反省の弁

 競馬に故障はつきものとは言うものの、戦線を離脱した馬が例年に増して多かった。POは、とりあえずレースに出走することが大前提であり、また藤澤和雄の言葉を借りるなら、「無事にしておけばチャンスがある」ゲームだから、出走回数とポイントは当然比例する。G1馬がいれば話は別だが、結局のところ如何に各馬が順調に出走回数を重ねるかが最後の最後に効いてくる。特にサンデーサイレンス以後はホームランが狙い難い時代になった。もちろん、長距離砲をチョイスしたいところだが、まずは故障しないアベレージヒッターを獲得することがサンデー以後の定石になってくるように思う。


 そういう観点からすると、昨年度の選択は最悪だった。現在、10頭中7頭が休養・故障・死亡によって戦線を離脱している。ティルガの死亡は全くの想定外だったが、ウインプラチナムはもともと体質面で不安があった。それでもなお、ダイヤモンドビコー×国枝栄という理由で選んだのだ。「ウイン」はやはり信用できない。昨年度はマンハッタンカフェが伸びてくるのではなかろうかという予想から選んだサクラシコウテイ、サルスエラ両馬とも撃沈。実際、重賞でマンハッタン産駒はタキオンに継ぐ成績を上げたが、虚弱体質の馬を選んでは意味がない。これだけ活躍したウォーエンブレム産駒から選んだジーピーエンブレムも戦線離脱。実際のところ、離脱しなくても大した成績は上げられなかった感じさえする。ダンツエスエスティは山内から橋本へ転厩したが、その調教師までもが死亡したというヲチ。山内厩舎はダーレージャパンの受け入れ先として相当数の馬を転厩させたが、そのダーレーもJARから撤退し、どうしたいねんという話である。





後継種牡馬の事情 〜タキオンとディープの間で〜


天下は一人の天下にあらず、天下の天下なり。天下の利を同じうする者は天下を得、天下の利をほしいままにする者は天下を失う。 太公望

 これだけSS後継種牡馬がいるとなると、競争は熾烈である。現在のところアグネスタキオンが抜け出した印象だが、それ以外では群雄割拠の状態。年度毎に活躍する種牡馬が変わりそうである。競走は熾烈だが、それゆえに生産界は正直である。ミーハーと言ってもいい。取り立てて活躍馬が誕生しなかったスペシャルウィークは昨年66頭。しかし、今年は所謂「シーザリオ元年」に当たる年で、140頭を超える若駒がスタンバイしている。「今年はスペシャルウィーク」と言われて当然であろう。そうはいうものの、SS後継種牡馬は――いや、どの種牡馬にも言えることだが――結局のところ繁殖牝馬の質に多くを依存する。アグネスタキオンアグネスフライトは全く同じ血統で、フライトもダービー馬だというのに致命的な差が出てしまった。繁殖に恵まれるか否かがどれだけ重要かという問いに対して、ひとつの答えをこの兄弟は示してくれた。一方で、どうもわからないSS後継種牡馬もいる。エイシンサンディはその典型で、今年もベンチャーナインをクラシックに乗せてきた。過去にもエイシンテンダーをクラシック路線に乗せ、本馬は未勝利ながら少ない産駒がかなり渋い活躍を見せている。そう考えると、SS産駒のG1馬、例えば、ジェニュインやイシノサンデーの子供はほとんど聞かなくなったし、タヤスツヨシバブルガムフェローマーベラスサンデーはダートという印象が強い。彼らの現役時代の能力は、間違えなくトップクラスだった。また、母系も優秀である。種牡馬としてもうひと踏ん張りが利かないのは、初年度、遅くとも2年目までに活躍馬を輩出することができなかった点に集約される。あとは落ちてゆくのみ。スペシャルウィークにもその危険性があった。もしあの年にシーザリオインティライミが出なかったら、昨年の66頭からさらに減っていたことだろう。今年デビューのネオユニヴァース、再来年のディープインパクトはいずれも生産界の超売れっ子である。タキオンとディープに挟まれたここが正念場のSS後継種牡馬





スペシャルウィークの理由


賭博は畢竟、運命が多くの時間、時には多くの歳月をかけてやっと生み出すところの幾多の変化を、唯の一瞬のうちに引き出そうというのではあるまいか。 アナトール・フランス


 小生は競走馬としてのスペシャルウィークはあまり評価していないが、種牡馬としての同馬は非常に高く評価している。だから、不作と言われた昨年度もスペシャルウィーク産駒を上位で指名したのだ。世間では、「アーニングインデックスの数値が小さい」とか、「あれだけ社台の馬と配合しているのに1億以上稼いでいる馬が少ない」など散々言われているが、そこまで悲観することはないと思っている。むしろ、期待のほうが大きく、今年のように牝馬の質の高い産駒が控えていれば、アグネスタキオンに肉薄できるとも思っている。とにかくどの馬も馬っぷりがいいというか、比較的胴長で、個人的に好みだ。今年の産駒の中からシーザリオを超える馬が出るんじゃなかろうか?それぐらい期待していい。





種牡馬に関して


偉大な知恵は懐疑的である。 ニーチェ


 目新しさと現役中のド派手なパフォーマンスで、生産界のみならずこのPOにおいても新種牡馬には熱視線が注がれる。だが、1年目に関しては「ケン」が懸命だろう。前評判が非常に高かったシンボリクリスエスも、マルチ馬アグネスデジタルも、結局重賞1勝止まりだった。特にクリスエスは産駒が145頭という大挙で挑んだにも関らず、唯一勝ったダンツキッスイはHBAセール出身で、ほとんど注目されていなかった。マンハッタンカフェが143頭で重賞馬2頭を出していることと比較すると、やや分が悪い。今年もダービー馬2頭、ネオユニヴァースキングカメハメハ産駒がデビューするが、新種牡馬はグループ内規定の1頭より多くは取らない。





数値的目標


大きな敗北を別にすれば――大きな勝利ほど恐ろしいものはない。ウェリントン


1.年間総出走回数75戦以上。

2.対象G1レース全出走。

3.重賞1勝以上。

 タイトルには拘らない。昨年度の反省を踏まえて、コンスタントに出走させることが最大の目標にする。ただし、これが一番困難であることはPOを齧った人間なら誰もが知るところだろう。この目標はもしかしたら重賞制覇よりも断然に難しいかもしれない。2.を達成するにはトライアルや重賞で好走をすることが前提条件だから、3.はあくまでも付随的な目標だ。森秀行の目標は年間100勝らしいが、小生も大きく目標を掲げれば、年間総出走回数100戦と言ってもいい。で、勝率は1割程度で十分である。未勝利馬は当然出る。そんな中でも、とにかく順調にレースを使われれば、上位を窺えるチャンスは出てくるだろう。やっぱり、持ち馬が出走しないのはつまんないよね。





住み分けのない選択


異端として始まり迷信として終わるのが新しい真理の習慣的な運命である。 ハンスリー


 一般的に、1.クラシックを狙う馬、2.仕上がりが速い馬、3.ダート馬にカテゴライズし、同時に牡馬と牝馬の割合を考え選んでいく。もちろん、2.の中に外国産馬が入れて重複させることもあるが、凡そこんな感じだろう。ただ、小生は今年からそれはやめようと思っている。理由として、血統的背景だけ距離云々ということを判断することは難しい。というか、逆に言えば意味がなくなってきたのかなというのが最近の競馬を見ていて感じている。もちろん、仕上がりの早い遅いは血統背景からある程度予測できるが、距離に関しては境界が曖昧になってきている。ノーザンテーストは万能型と言ってよかっただろうが、ひと昔前は、短距離はニホンピロウイナー、短中にトウショウボーイ、長距離にリアルシャダイがおり、リアルシャダイから重賞レベルの短距離馬が出ることはまずなかった。つまり、棲み分けがきちっとなされていたわけだ。しかし、近年においては確かにサクラバクシンオー産駒からは短距離馬しか誕生しないが、エンドスウィープフレンチデピュティらの産駒の活躍を見せられると、ちょっともう無駄かなと思ってきた。つまり、中距離血統を揃えておけば、ある馬は短距離で活躍するし、ある馬は長距離で真価を発揮する。またある馬はダートに活路を見出すかもしれない。したがって、端から「これは短距離馬」と決め付けるのではなく、取った馬がたまたま短距離馬だったというほうがリスクは少ない。血統的背景から仕上りが早く短距離での活躍を見込んで選択したにも関らず、初戦から動けなかったら最悪である。その時点でアウトだ。一方、2000メートル前後で強さを発揮したサンデーサイレンス系の種牡馬は、おおよそどの距離もこなせることが最近わかってきた。また、芝もダートも問わない。だから、最初に言ったようなカテゴライズで馬を選択する必要はなく、自ずと得意分野に定着していき、結果として1.クラシック、2.短距離、3.ダートに分散されていくだろう。





論功行賞はどこまで必要か?


世界のいかなる所とも永く同盟することを避けるのが我々のほんとうの政策である。 ワシントン


 多くのグループがそうであるように、ある繁殖牝馬の子供は特定の人が毎年指名する場合が多い。確かに、上が走ったら下もと思うのは人情だし、タイトルを取らせてもらった敬意を払う意味でも、論功行賞的な指名はありだと思う。ただ、小生の場合はこれまで特筆すべき活躍馬がいなかったから、選ぶ余地もなかった。しかし、おかげさんでG1馬も誕生し、その下を取ってもいいかなと考えている。そもそも、小生が競馬を始めた頃、兄弟が揃って走ることはめったになかった。だからビワハヤヒデナリタブライアンは特別だったのだ。だいたい1頭重賞馬が出せれば繁殖としては十分だったし、その上も下も全く走らないことはざらだった。したがって、3世代連続で重賞馬を出すとか、クラシックに出走する近年の競馬には非常に抵抗があって、あまり考えられていない血統構成、具体的に言うならば、兄弟全てがSS系種牡馬のような場合、「なんだかな〜」と疑問を感じてしまう。小生はへそ曲がりだから、論功行賞は論功行賞でも、タイトル馬の下よりも長く注目したい血統がある。例えば、アサクサキングスピンクカメオフローテーションの下は当然目が向くけれども、獲得するなら半歩ずらしてみたい。それが昨年度1位で指名したキャッツプライド。プライドオブキングは初仔で1勝止まりだったが、これからまだまだ伸びて来そうというか、追い続けてもいいかなと思っている。プライドオブキングが国枝栄、そしてガートモンテスが大久保洋と関東では屈指の名門だ。当然、期待されているということなのだろう。





厩舎について


彼を知り己を知れば、百戦あやうからず孫子


 厩舎の話になったので、少し触れておく。厩舎の格差は実社会よりも甚だしい。もっとも、競走という名目を掲げている以上当然といえば当然なのだが……。しかしながら、ここまで勝ち組と負け組の差が出ると「??」だ。さて、じゃあどうしてここまで格差が出てきたのかと考えると、さまざまな原因が考えられるが、やはりセレクトセールとクラブオーナーの制度が挙げられる。そもそも、今では珍しい部類になってしまったが、オーナーブリーダーが当たり前だった。代表的なのは、タニノ、シンボリ、メジロ、ニシノ(セイウン)等等。今でこそ谷水牧場はメジャーだが、ギムレットが出る前は非常に苦しい時代だった。嘗ては名門と呼ばれていても、小生が競馬を始めた頃はタニノのつく馬はG?どころかOP馬さえいなかったように記憶している。シンザン記念2着のタニノリファーズ、4歳牝馬特別(現・フィルーズレビュー)3着で、ウォッカの母タニノシスターくらいだった。タニノチカラタニノムーティエはもはや遠い昔の伝説であった。メジロ牧場は今苦境ではなかろうか?ライアン―マックイーン、ブライト―ドーベルの間は約10年ある。



 しかし、セレクトセールが活発になった昨今、繁栄期と停滞期を繰り返すオーナーブリーダーとは対象的に、財力のある者が良血馬を買い漁る時代へと変わった。具体的に言えば、金子、近藤、関口の“セレクトセール三羽烏”だ。だから、オーナーと調教師の間に1回良好な関係が構築されれば、次々と今最も旬な血統馬を管理することができる。オーナーブリーダーでは血脈を大切にするから低迷期があって当然であり、保守的な考えの調教師はそういったオーナーブリーダーの関係を大切にするから成績にムラが出る。例えば、メジロ牧場の馬をほとんど手がけている大久保洋は関東を代表する厩舎だが、今年の成績は芳しくない。ムラで言えば、ビワハヤヒデファレノプシスの浜田厩舎もまたその典型だった。クラブオーナーもセレクトセールと構造は同じで、競馬の玄人を相手にしているわけではないから、自ずとブランド力のある厩舎へ入厩させることが客集めの最短の道だ。この流れにうまく乗ったのが、今をときめく角居厩舎であり、松田国であり、池江息子である。藤澤和、森秀はそのパイオニア的存在であったが、今では愛弟子たちに飲み込まれる情勢である。



 活躍馬が出れば、いい血統の馬を託される……その循環で厩舎が軌道に乗っていくというのは当たり前の発想だけれども、もうひとつ重要なことは大将格の馬がいると、その他の馬にもいい影響を与えるということだ。つまり、人間ではなく馬同士のシナジー効果である。よく藤澤和は馬をしっかり歩かせることをする。しっかり歩くフォームを身に付けてこそ、しっかり走れるという発想からだ。その場合、大将格の馬を先頭に歩かせ、格下の馬についていかせる。すると格下の馬は懸命に大将について行き、そしてフォームを真似るのだそうだ。だから、ダンスインザムードゼンノロブロイの背中を追い、ゼンノロブロイシンボリクリスエスの背中を追う形で成長した。逆に言えば、大将格の馬を欠いた時は苦しくなり、藤澤和が近年やや精彩を欠いているのはそういったことも考えられるのかもしれない。関東のもうひとつの雄、国枝栄マツリダゴッホサイレントプライドサトノプログレスで3週連続Vを飾り、またマイネカンナで福島牝馬Sを制するなど絶好調である。もともと手腕は関東屈指だったが、やはりマツリダゴッホという大将と併せて機会があることも大いに関係していると思う。余談だが、関東はこの2人、関西では森くらいしか、現在外国産馬を上手に扱える調教師はいないと思っている。



時代は10年戻ったか?

時は最大の革新者である。 ベーコン


 SSが死亡し、いわゆる「ポストSS時代」と言われて久しいが、果たして競馬そのものは前へと進んでいるのだろうか?今年の皐月賞で最右翼と言われたのはマイネルチャールズ、そして昨年の皐月賞はヴィクトリーと、いずれもブライアンズタイム産駒である。ブライアンズタイムの底力を再認識させられると同時に、如何せん時代錯誤の感を否めない。サンデーサイレンスより1年先に産駒がデビューし、ナリタブライアンチョウカイキャロルを輩出した大種牡馬だが、サンデーサイレンス以後は数と質で上回るサンデーサイレンスに、一発長打の産駒で抵抗してきたブライアンズタイム。しかし、サンデーサイレンスがあまりに偉大だったため、3〜4年前からはダート界に活路を見出した。そのブライアンズタイム産駒が、サンデーサイレンス死亡後こうしてまたクラシックの主役を張るのは、サンデー以後の混迷時代の象徴的な現象である。ただし、SS系の母数は圧倒的で、母系にSSが入っていなかったらSS系種牡馬を、その他の種牡馬の相手は、SS系の繁殖という、2パターンに大別されるのは周知の通りである。じゃあ、競馬の未来を考えた場合、父系にも母系にはSSが入っていない内国産の存在は大変重要になってくる。新時代へいざ――





指名を終えての総評


求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見出さん・門をたたけ、さらば開かれん。 『新約聖書

 今年は必須本『ギャロップ増刊号』がドラフト当日まで手に入らなかったため(ヘタレ〜ありがとう!)、ウェブサイト「POGハイパー」から全競走馬リストをダウンロードして選んだ。POG関連本は当然のことながら、最初の時点で半分〜3分の1は削ぎ落とされる。つまり、8000頭のうち、名前が載るのは4000頭〜2500頭だろう。そして写真まで掲載されるのは全体の10分の1に満たない。今年はその8000頭近くいる馬をまさに虚心坦懐に選ぶため、父親を敢えて消し他の情報から選んだり、兄弟馬リストを消したりし、真っ白な状態で全部の馬に目を通し選ぶように心がけた。方法としては邪道かもしれないが、去年とは全く異なる選出方法を試したかったのだ。


 種牡馬で言うならば、ダンスインザダークはやはり0頭。今をときめくアグネスタキオンも0頭。それからシンボリクリスエスジャングルポケットの非SS系種牡馬も選ばなかった。ジャングルポケットは確かにルルパンブルーがいるけれども、基本的にはフサイチホウオートールポピーの兄弟しか走ったイメージがない。一方のシンボリクリスエスはまだ傾向が掴めていないというか、正直言って面白みがないため選ばなかった。既述したような反省点を踏まえ、今年は近年でも屈指の強力なラインアップになったと自負している。それは以下を見ていただければおわかりだろう。



1.デルフォイ

 まず、兄のシックスセンスの能力だが、相当高かったと判断している。同世代でディープインパクトに抵抗できる馬はいなかったものの、2番目に高い能力の持ち主だった。ある人はアドマイヤジャパン、またある人はインティライミ等の名前を挙げるだろうが、小生はこのシックスセンスだ。確かにアドマイヤジャパン菊花賞であわやにシーンを演出したが、続くJCでは惨敗を喫した。インティライミ皐月賞菊花賞に出走しておらず、その後の走りもイマイチである。一方のシックスセンスは皐月2着、ダービー3着、菊花賞4着で、香港ヴァーズで出遅れながら2着に来た。ジャパンが世界相手に通用しなかったのと比較しても、アウェーで上位に食い込んだシックスセンスの能力に疑う余地はない。3歳で香港に行った馬ではサイレンススズカソングオブウインドアドマイヤメイン等がいたけれども、連まで来たのはシックスセンス唯一頭である。ただ、シックスセンスの全弟ボーンホルムは駄馬だった。何とか期待のスペシャウウィークで確変はないだろうか??あと心配な点と言えば、長浜厩舎の騎手である。もともと河内洋と太いパイプを持っていたが、河内引退以降は迷走を続け、シックスセンスは四位、上村、リトルアマポーラ武幸四郎のヘタレ騎乗でクラシックをフイにした。最低でも四位。兄以上の活躍を期待。



2.ドリームハッチ

 秘密兵器第1弾がこのグラスワンダー産駒。グラスワンダーはまだ代表馬と呼べるような馬を輩出していない。もっとも2000m以上のレースで上がり31秒台を使うオースミグラスワンはある意味では代表産駒だが、ビッグタイトルを獲得するには至っていない。このまま終わってほしくないという応援の気持ちから、この馬を指名。グラスワンダー産駒ではフローテーションの下のリバティーフロー(角居)がPO的にはそこそこ人気しているが、違った牝系を開拓したいがだめに、こちらを選んだ。決め手になったのは半兄ゴールデンダリアの存在。ダービー8着も優秀だったが、プリンスパルS及び、セントライト記念で見せたパフォーマンスは世代でも屈指だった。現在は残念ながら休養しているが、フジキセキからグラスワンダーに変ってどういう影響が出るか?毎年のようにクラシックに有力馬を送り込む二ノ宮。始動も早そうで夏を予定。



3.ジュモー

 秘密兵器第2弾にタニノギムレット×ビスクドールをチョイス。これも昨年指名したドリームローズの下。ドリームローズは新馬だけで完全燃焼した印象がある。よく新馬で生涯最高の脚を披露し、そのまま終わる馬がいる。有名どころではモビーディック。あまり有名じゃないところではイブキバイチャンス。ただ、姉は父サクラバクシンオーということで、長い距離は最初からアウト・オブ・眼中だった。しかし、短い所でも不甲斐ない競馬をしたため、今年度の所信で言ったように、専用馬、つまり、ダート専用とか短距離専用とかは活躍の場が限定される。そしてその狭い範囲でも活躍できなかったら、もうその馬はおしまいになってしまうことは先に述べた通りだ。そういった点で、父がサクラバクシンオーからタニノギムレットに変ることで単純に考えれば距離の守備範囲は広がるだろうし、ムラのある印象のタニノギムレットも、堅実な仔を出すこの母ならば中和されて何とかならないか?厩舎は池江息子。



4.○市キングウェールズ

 秘密兵器第3弾が本馬。セレクトセール5500万で落とした杉山氏はスギノキューティー等の馬主として知られている。今、生産界で社台ファームノーザンファームに「質」で対抗できるのはこのパカパカファームくらいだと思っている。ダイヤモンドヘッド、ピンクカメオに続くパカパカファーム生産のチョイスである。ちなみに厩舎は浅見秀を予定している。さて、何が隠し玉かというと、キングマンボ産駒とこの浅見秀の組み合わせがいいのではないかと思う。というのも、浅見秀は勝ちきれない馬に対して鬼のようにレースに使う。例えば、ランチボックスはその洗礼を受け、昨年から今年にかけてのレースの使い方はまさに鬼であった。後述するノブレスオブリッジも牝馬ながら43戦。マンハッタンスカイも勝つまでひたすら使った。もっともそれが馬にとって正しいのは正しくないのかはわからない。ただ、POというゲームの性質上、レースを使うことが大前提。そして条件戦においては着を拾っても無意味であること浅見秀はよく理解している。キングマンボ産駒は使われつつ強くなっていくイメージがある。キングカメハメハの名前は出すまでもなく、スターキングマン、あるいはアメリカで走ったレモンドロップキッドもそうである。馬主の杉山氏もまたレースをたくさん使うことに抵抗はないようだ。浅見秀には鬼になってほしい。



5.ネオイユドゥレーヌ

 さらに秘密兵器は続き、父ホワイトマズルに母ノブレスオブリッジの本馬。昨年度、ホワイトマズル産駒は指名しなかったが、一昨年はアサクサキングス、2年前はクラロッジ(未出走)とホワイトマズル産駒は贔屓にしてきた。なぜホワイトマズルかというと、現在の日本の生産界において欧州血統の正当継承者はこの馬しか見当たらない。嘗てはトニービンが君臨し、更にはミルジョージ、あるいはノーアテンションらが大レースになればなるほど強い馬を輩出していたが、ラムタラの失敗により欧州血統の輸入に関してはかなり消極的になった。現在ではリースか持ち込みにより、リスクを回避の措置がとられている。父内国産が一般的になった今だからこそ見直したい欧州血統。その最右翼がホワイトマズルというわけだ。ホワイトマズルは本当に不思議な馬で、イングランディーレという、2400mでも短いくらいのステイヤーを出した一方、1600mでも長いビハインドザマスクも輩出した。晩成傾向であった前出の馬とは対照的に、スマイルトゥモローは比較的早い時期から能力を開花させた。母のノブレスオブリッジはとにかく堅実にそしてコンスタントに走ったサンデーサイレンス産駒。札幌記念3着で示したように、能力的には重賞でも通用した。今年、POGで人気になっているラシルフィードとは03年の1000万条件戦春日特別で相見え、あっさり競り落としている。ノブレスオブリッジの母の父はモガミで、92年にノーザンテーストに次ぐ2位の成績を残したパワー形の種牡馬。一見地味に見えるが、サンデー×モガミは「超」のつく爆発力を秘める日本生産界の縮図とも言える。厩舎が気になったけれども、音無ということで問題はない。当然、クラシックを狙う。



6.ダンツライブリー

 フォーティナイナーは歴史的名種牡馬である。日本での活躍馬はほとんどダート馬だが、一介のダート血統と判断してはいけない。それはエンドスウィープからアドマイヤムーンラインクラフトスイープトウショウと続く血脈が証明している。ユートピアが芝でもやれたように、今でも芝の超大物が出ても不思議ではないと思っている。ちなみに、超大物候補サダムイダテンは大物ではなかったことで、その期待は持ち越しになった。昨年度は手の回らなかったこの歴史的名種牡馬の産駒を2年ぶりに獲得してみようと思いこのダンツライブラリーを指名。実はもう一頭、マチカネベニザクラの仔、すなわちマチカネメニモミヨ、マチカネオーラの下と悩んだのだが、やや晩成傾向にあるらしく、またダンツライブリーの全兄に富士Sを勝ったキネティクスがいることから芝で結果を残した血統背景であることを加味し、こちらを選んだ。この牝系は大変優秀で、キネティクスの他、地方馬として始めてJBCスプリントに勝ったフジノウェーヴ(父ブラックタイアフェアー)がいる。HBCセレクションセールで6300万という高値で(株)FDOが購入したが、どういう経緯なのか同じセールの秋、2200万で「ダンツ」の山元氏の手に渡った。厩舎はまだ決まっていないが、おそらく山内になるのではないかと思う。山本−山内はダンツシアトルダンツフレームの両宝塚記念馬をはじめ、ダンツキッチョウダンツシリウスとクラシックに乗せてきた。昨年度もコマンダーインチーフ産駒、ダンツウィニングを皐月賞に出走させ、山内厩舎復活の兆候はある。そして、今ではダート馬の活躍が目立つコマンダーインチーフ産駒を芝で結果を出したことは評価できる。「フォーティナイナーでダービーを」を合言葉に、いざ。



7.ガートモンテス

 秘密兵器第4弾にマンハッタンカフェ×キャッツプライドを挙げる。昨年度はこのキャッツプライド(父スペシャルウィーク)の産駒を1位で指名した。結果は1勝止まりだったが、母の初仔であったことを考慮すれば、もっと深追いしてもいいかなと思い指名するに至ったことは既述の通り。論功行賞は活躍馬の下を取るのが論考功労の論功行賞たる所以だが、将来性も含めてまだ若いこの母の産駒をもう一丁狙ってみたい。ちなみに、マンハッタンカフェは徐々に成績を伸ばしてきそうな雰囲気である。初年度はココナッツパンチくらいだったが、2年目の昨年度はオリエンタルロックレッドアゲートの2頭の重賞馬を輩出し、言われているほど晩成傾向にないように思う。昨年度獲得したマンハッタンカフェ産駒は2頭とも体質面での弱さを露呈したが、所縁のあるこの血統で何とかしたい。厩舎は今年不調も手腕は確かな大久保洋。



8.ダノンファントム

 実を言うと、スペシャルウィークを3頭くらい考えていた。だが、他の馬に目移りしてしまい、結局2頭にすることに。そして2頭目リーチザクラウン(母クラウンピース 橋口)か、ハクナマタタ(母タイキメビウス 国枝)あたりにしようと考えていたが、リーチザクラウンはマリモ氏が7位で、ハクナマタタはパッション氏が10位でそれぞれ指名したようなので、本馬を8位で指名するに至った。他にもマイバレンタインの06、あるいはプレシャルラバーの06と、今年度のスペシャルウィークの産駒は枚挙の暇がない。本馬は周知のようにセレクトセールで9800万をつけた高額馬である。しかも池江パパの管理で、普通なら残るはずのない馬である。しかしながら、馬主が「ダノックス」ということで嫌われたのだろう。確かに、ダノックスは獲得賞金が1億を超えた馬はまだいない。しかも、良血ばかり集めているにもかかわらず、である。ただ、「ダノックス」はまだ馬主の経歴は長くない。一番古い馬でダノンキングが98年生まれで、あとは00年以降の生まれた馬ばかりである。特にこの3〜4年で一気に拡大している。「トーセン」の島川氏は馬主歴が長くてあのDQNな成績なのだが、例えば近藤利一も最初の頃は鳴かず飛ばずで、それはそれはひどいものだった。後述する山本英氏と同じく、「ダノックス」も直に軌道に乗ってくるだろう。また、軌道に乗ってこないといけないだけの馬を揃えている。



9.○新トロピカルキング

 新種牡馬に関しては、キングカメハメハネオユニヴァースかいずれにしようか最後まで迷った。とにかく新種牡馬は1頭だけと決めていたから、両方取ることはありえなかった。キングカメハメハならショウナンパントルの下、オースミハルカの下の2頭も候補だった。一方のネオユニヴァースならショウナンタキオンの下、もしくはオリエンタルロックの下あたりにチェックを入れていた。本馬に決めた理由は、これ以上関東馬は取りたくなかったことと、1頭金子真人HDを入れておこうというミーハー根性に因る。母、プリンセスリーマはあのメイショウドトウをはじめ、プリンセスルシータ、トロフィーディールという活躍馬を世に送り出してきた。だた、であるがゆえに、本馬を出産したのが22歳と高齢だった。ピークは超えていると思うが、競走馬は何があるかわからない。厩舎は松田国。セレクトセールで3500万だった。



10.○外アムールマルルー

 噂の超大物をここで指名する。落札額としては北米レコードとなる270万ドル(約3億1500万円)で、エレクトロキョーショニストの弟であることはもはや説明不要。外国産馬に関しては、何も思い入れがない。あと、最近の外国種牡馬の事情がよくわからん。コジーンやダンチヒは日本でもお馴染みの種牡馬だったが、時代は変わり、今ではその孫たちが種牡馬となった。しかしんながら、その間に日本競馬はサンデーサイレンスの独壇場となり、外国馬に対しての勉強を怠ったようだ。さて、本馬はカジノドライヴで話題を集めた藤澤和×山本英のライン。カジノドライヴがああいうことになり、またPO向きではないと嫌われたのか、誰も選ばなかった。この馬もまた海外遠征を早期から計画しているようだ。たぶん、山本英の考えとして、クリスタルウイングのようにセレクトセールで落とした馬は国内に専念し、海外で買ってきた馬は遠征するという使い分けをするだろう。今年で言えば、ガゼルロワイヤルの子供がそれにあたる。国内のタイトルも欲しいというのは、当然の思考である。だから、例えばラーイ産駒のフライングアップルを海外にも連れて行かず、ダートも使わずに皐月賞、ダービーに出したのだと思う。藤澤は海外志向が強いと言われているものの、それは勝てる確証がないと滅多に連れていかない。つまり、彼にとって海外遠征は話題作りではないのだ。あのシンボリクリスエスでも海外挑戦はしなかった。ちなみに、タイキブリザードブリーダーズカップを大敗したが、JC4着の走りを見て藤澤本人は「やれる」と思ったらしい。そのあたりは相変わらずDQNである。海外遠征するんだったら、スパークキャンドルのような帯同馬としてではなく、主役として行ってほしい。

 藤澤和を揶揄し「外国産とサンデーしか走らない」と言われることがある。今年、話題のスペシャルウィーク産駒、ガンズオブナヴァロンが控えているが、父内国産に限って言えば、もっとも稼いだ馬は開業してまもない頃に手がけたキリスパート(父メジロティターン)。PO期間中に限定すると2勝だった。また、日本に輸入された種牡馬の子供で一番走ったのはシャドウクリーク(父ジェイドロバリー)だが、期間中は未出走に終わった。サンデーと外国産以外でクラシックに出たのは、記憶にある限りスズノマーチ(父ディンバーカントリー)しかいない。確かにガンズオブナヴァロンは気になる馬ではあるけれども、藤澤和に内国産はある意味酷かなと思う。いずれにせよ、本馬は10位だったら取ってもいいだろうという消去法。正直言って、フライングアップルくらい走れば御の字である。



結:

このエントリー書くのに4時間費やした。レポート用紙にして14枚にもなった。






※本エントリーは平成20年6月15日ものに、加筆・修正を加えました。