:天皇賞の係る予想




すべてのスポーツには、少量のアルコールのように、少量のセンチメンタリズムが含まれている。三島由紀夫『「別れもたのし」の祭典――閉会式』)


 18頭のフルゲートは、主役不在を顕している。近年では、小生が「長距離戦線の暗黒時代」と銘打った、04年〜06年の状況と非常に似ている。あるいは、14年前、ナリタブライアンが戦線離脱し、エアダブリンが1番人気になった95年の状況とも重なる。そして、そこから我々が学ぶべきは、レベルが下がれば下がる程、スタミナ頼みになってくるという事実である。というのも、「レベルが低い」と判断した陣営が色気を出し、挙って距離適性のない馬を出走させるからだ。04年だと、ツルマルボーイ(2番人気4着)、ダンツフレーム(9番人気6着)、タガノマイバッハ(6番人気8着)あたりがそれ。今年で言うと、その筆頭格がドリームジャーニーということになる。もしドリームジャーニーが来たら、ただでさえグラグラしている競馬に対する認識を、完全に覆されることになるため、ここは背水の陣である。


 長距離に対する絶対的な自信――それが何よりも重要ではなかろうか。特に今年のような主役不在の状況では。そこでまず、3000m以上のレースに出走した経験のない馬を消していこうと思う。過去10年の1〜3着馬で、3000m未経験だった馬はシルクフェイマスただ1頭。しかし、シルクフェイマスは条件戦から連勝してきた馬で、それまで自己条件に3000mを超えるレースがなかったのも事実であり、この場合消去の対象となるのは、「3000m以上のレースに出るチャンスがあったにもかかわらず、これまでそれより短い距離のレースを使い続けてきた馬」ということになる。内枠から、

である。..........思ったほど消せないなぁ。



それから、休み明けで来た馬ってのも記憶にない。実際に来たのはサクラローレルだけだ。まあ、ぶっつけでここに臨んでくる馬が相対的に少ないため、説得力に欠けるが、順調に使われていることは相当重要な要素になるんじゃないか。何度も言っているように、今年のようにレベルが低いレースにあっては。


 ネヴァブションにする。結局、今回のレースは前走の結果がそのまま人気に反映される情勢だ。例えば、7年前のマンハッタンカフェ日経賞で惨敗したけれども、G1を2勝の実績が買われ2番人気だった。ただ、G1未勝利のネヴァブションのような馬が惨敗すると、すぐに人気は落ちる。今回もそんなに人気はすまい。しかしながら、2走前のAJCCエアシェイディアルナスラインドリームジャーニーらを完封しているように、「もし」日経賞で人気に応えていれば、忽ちにして人気の一角を形成しただろう。2年前にもにも天皇賞に参戦し(7番人気13着)、今年は満を持して2度目の参戦。当時も日経賞マツリダゴッホを下すなど才能の片鱗を垣間見せたが、何が変わってきたかというと、やはり展開に左右されなくなってきた点。当時は追い込み一辺倒だったが、横山典が逃げ、先行、差しとさまざまな展開を試み、今では中段より前目で折り合えるようになった。それから、ある程度の時計勝負にも対応できるようになってきた点が挙げられる。まあ、先行する術を身につけたからこそ、対応できるようになったとも言えるが。陣営はかねてより長距離砲として期待を寄せていた馬。メンバーが手薄の今年は最大にして最後のチャンスと見る。


 実績断然のデルタブルースは、阪神大賞典(6着)の内容が上々だった。世間では高齢馬に対して冷ややかな見解だが、こういったメンバー構成になったのだから、再考してもよさそう。天皇賞には過去2度参戦も、いずれも大敗した(06年:4番人気10着、07年:3番人気12着)。菊花賞メルボルンCに勝っている馬が、ここまで大敗するのは本当に意外としかいいようがないが、この2度の天皇賞は、歴史ある天皇賞の勝ちタイムの1位と2位であり、デルタが大敗したのは、この高速決着が原因だと検証した。「長距離戦線の暗黒時代」のタイムは、ディープインパクトメイショウサムソンに比べ、3〜4秒遅い。今年はテイエムプリキュアホクトスルタンの2頭が先行し、無茶苦茶スローになるとは考えていないが、そうなった場合、上がりも同時に要するのではないか。勝ち時計が3分16秒台、上がりが35秒台後半になればデルタも台頭できるし、またこのメンバーならば、そのくらいのタイムになると思う。ゼンノロブロイディープインパクトメイショウサムソンの打倒を目指した数少ない馬。


 デルタブルースが来るような展開ならば、アサクサキングスも抑えときゃなあかん。有馬記念でシンガリ負けを喫したときは、まさか翌年の天皇賞で1番人気になるとは思わなかった。京都記念を勝った後も懐疑的だったが、オウケンブルースリの戦線離脱とスクリーンヒーローの不甲斐ないレースが重なり、2年連続の1番人気になった。ただ、小生はこの馬をステイヤーだとは思っていない。速い上がりが使えないから、中距離の一線級相手に結果が出せない中距離馬だと思っている。だから、高速決着が必至なレースになったら迷わず消せるが、今回は消耗戦になりそうで、浮上してきそう。


 △トウカイトリックと△ホクトスルタンは1回使われたことで何とか変わってこないか?モンテクリスエスやヒカルカザブエあたりが少々人気をするんだったら、こちらのほうが妥当だと思うのだが。




 スクリーンヒーローアルナスラインは消耗戦タイプではないように思え、来たら諦める。