:東京優駿に係る予想




勝った馬が常に美しいのは、運の祝福を受けているからにほかならない。 寺山修司『僕が戦場に行くとき』


 オークスのようなレースは「見」が妥当。競馬に限らず、ギャンブルにおいては、如何に「見」を貫けるか、それも力量のひとつだと思う。同じようなことは、阿佐田哲也も言っていた。一方で、「負けてもなお」賭け続けるのも、ギャンブラーの資質ではなかろうか。今週末は日本ダービーゆえ、イレ込んで予想してみたと思う。



メンバー構成

 賞金で言うと、アイアンルックがボーダーであり、G2で2着の実績があるデルフォイミッキーペトラが出走できないという状況になっている。外国産馬に門戸が解放されていなかった時代はマイルCに行くのが王道であったが、門戸も解放され、またマイルC→ダービーというローテーションがポピュラーなものになったから、相対的に獲得賞金によるボーダーラインが上昇するのは納得できる。だから、従来であればトライアルを使う必要がなかった馬、例えば、ベストメンバーやアントニオバローズもダービーへ出走するためには、どうしてもトライアルを使わなくてはならなかった。しかも、京都新聞杯にあっては「勝つ」ことが最低ラインだったから、ダービーという目標があるにも関わらず、そこに全力を投じねばならなかった。それは「勝った」ベストメンバーが骨折し、戦線を離脱したことが如実に顕している。


 そういった意味で、今年は皐月賞できっちり優先出走権を獲得した馬、及び、皐月賞終了時点で、トライアルを使わなくてもよいと判断できた馬が優勢と見ている。もともと、トライアルからダービーというのは分が悪い。ゼンノロブロイシンボリクリスエスでも勝てなかった。例年にも増してトライアルがトライアルではなく、総力戦になった今年の傾向を鑑み、皐月賞からの直行組を中心に考えたい。



その皐月賞

 ロジユニヴァースが沈んでいく姿に、衝撃を覚えた。ここまで前と後ろがひっくり返った皐月賞は記憶にない。確かに1頭だけ、例えば、ナリタタイシンエアシャカールテイエムオペラオーが追い込んできたケースはあるけれども、それでも、先行した有力馬、ビワハヤヒデダイタクリーヴァオースミブライトは残っていた。今年は先行して粘った馬が皆無だから如何に特異な例だったかがわかる。確かに先行争いは激しくなったが、じゃあここまで先行馬が壊滅的な状況になるペースだったかというと、少し疑問が残る。58秒台決着になった04 年(ダイワメジャー)と02年(ノーリーズン)と比較してみようと思う。

  • 09:12.1-10.8-11.9-12.1-12.2-12.1-11.9-11.8-11.7-12.1
  • 04:12.1-10.9-12.3-12.2-12.2-12.5-12-11.6-11.3-11.5
  • 02:12-10.9-12.1-12.2-12-11.8-11.7-11.7-12.2-11.9

 いずれも、2ハロン目に10秒台を叩き出しているが、ラップは似たりよったり。04年はダイワメジャーが2番手から抜け出し、逃げたメイショウボーラーも3着に食い下がった。また、02年もタイガーカフェは番手追走から2着に食い込み、ダイタクフラッグも2着にタイム差なしの4着に肉薄した。馬場差を考慮すると、02、04年は今年と比較するとタイムが出やすい馬場に違いはなかったが、数字で表すと0.3〜0.5秒くらいの差。確かに、今年の皐月賞は先行馬にとって辛い展開にはなったものの、壊滅的な状況になるほどではなかったと思う。したがって、今年先行した馬の能力がやや劣っていたと判断している。具体的にいうと、ゴールデンチケットアーリーロブストミッキーペトラあたり。ミッキーペトラプリンシパルSで見せ場もなく、皐月賞の時は少し評価を上げ過ぎたと反省している。



ロジユニヴァースの憂鬱

 「ダービーまで大丈夫」と豪語したロジユニヴァース皐月賞では1.7倍という圧倒的な人気を背負いながらも14着大敗という未曾有の結果に。ラジオNIKKEI弥生賞の勝ちっぷりは疑いようもなく、一流馬のそれだったが、こうも惨敗されると、??とさっぱりわからん。ただ、ダービーで一気に巻き返しってのは、かなり難しいのではないかと思っている。古い例でいうと、マティリアルやサッカーボーイサクラホクトオー同じ感じで、皐月賞で不可解な負け方をした馬は、ダービーで人気を背負うも復活はならなかった。とにかく、負けは負けでも、ロジの負け方は内容が悪すぎる。直接敗因に結びつく不利や気性的な問題があったとは思えない。強いて言えば、速い流れを経験していなかったということになるが、この時期2000m以上のレースを使われてきた馬のほとんどは、速い流れを経験していない。アンライバルドもチンタラチンタラしたレースしかしてこなかった。だからこそ、ロジのこの敗戦は、驚きと共に、諦めも含まれている。



チョイス

シェーンヴァルト

 皐月賞上位組で最も注目したのは、シェーンヴァルト。道中の折り合い、仕掛けのタイミングを考慮すれば、トライアンフマーチより上のパフォーマンスはしたと思う。終始かかり気味であり、北村友も我慢できずにアンライバルドの更に外を回って3〜4コーナーで進出を開始した。途中でそのアンライバルドを被せて行くぐらいの気合いを見せたが、如何せん最後は折り合いの悪さが祟って力尽きた。しかしながら、トライアルを使ったほうが圧倒的に有利な皐月賞にあって、共同通信杯(5着)からの参戦であり、多いに評価してよい内容であった。トライアンフマーチセイウンワンダーがそこそこ人気を集めるんだったら、こちらをチョイスしたい。



アプレザンレーヴ

 青葉賞組がダービーにおいて連まで来るのは、以下の条件を満たした馬だけである。

  • 青葉賞1番人気1着
  • 走破タイムが2:26秒前半

 この2つの条件は絶対に譲れない。もちろん、当日の馬場状態を考慮しなければならないが、アドマイヤメインゼンノロブロイシンボリクリスエスはこの条件を満たしていた。ヒラボクロイヤルハイヤーゲームは非常にタイムが優秀であったものの、いずれも3番人気であった。一方、ダンツキッチョウカーネギーダイアンらは1番人気で勝ったものの、タイムが条件を満たしていなかった。アプレザンレーヴは1番人気で勝ち、且つ、タイムも26.2秒と条件をクリアしているため、通用すると踏んでいる。



その他

 あとは、ナカヤマフェスタジョーカプチーノあたり。リーチザクラウンは逃げればぎりぎりまで粘り込めると思うのだが、鞍上が......。


 まだ時間はある。まあ、時間があるからって当たるもんじゃないけど。