5.指名馬一覧及びコメント




「銀が泣いている。」 坂田三吉



1.○父ヴィクトワールピサ/牡/黒鹿毛/07.3.31/栗東角居勝彦

 父ネオユニヴァース、母ホワイトウォーターアフェア。安田記念馬、アサクサデンエン(父スングスピール)、小倉記念天皇賞2着のスウィフトカレント(父サンデーサイレンス)らがいる、優秀なファミリー。マキャベリアンはミスプロの直系で、欧州2歳チャンピオンに輝いた、いわゆる、早熟のスピード型。日本でも産駒にコクトジュリアンフサイチホクトセイらが早期から活躍している。海外においても、マイル前後の活躍馬が目立つ。ただ、ホワイトウォーターアフェアの母系には、Bustinoキングジョージ2着)や、Lorenzaccio(チャンピオンSであのニジンスキーを破った)など、欧州競馬史を彩った名馬の名前があり、父系と母系のバランスが非常にいい。 兄貴たちはやや晩成傾向にあったが、父がネオユニヴァースに変わることで、クラシックに間に合うのではなかろうか?また、デンエンもカレントもマイル〜中距離を中心に活躍した馬であり、極端なステイヤー傾向は出ないはずである(当然、Machiavellianの影響を受けてのことだが)。かなりミーハーなチョイスではあるが、1位ぐらいはそれでいい。角居勝彦は「藤澤−森以後」の調教師であり、その手腕は確かなものがある。そして、小生がこの調教師を非常に評価しているのは、高齢まで馬を走らす点にある。今でもクラシックホースなどG1勝ちを収めた馬が4歳、あるいは5歳の有馬記念を最後に引退するケースが多い。しかし、角居の場合、「繁殖ありき」で競走馬を育成していないように思う。まあ、カネヒキリデルタブルースポップロックらは一癖も二癖もある馬だから、繁殖に向かないということを角居が最も理解していると思うが、ウォッカレベルの馬ならば、これまでの常識からすれば「昨年末まで」という選択肢が出てきてもよかったはずだ。だが、陣営は当たり前のように5歳の今年も現役続行。致命的な故障を発症せず、レースを使い続けることがどれだけ難しいかは、過去引退していった馬たちを振り返れば一目瞭然である。藤澤はG1馬となると前哨戦を使わずに、ぶっつけでG1挑戦させる。一方で、角居はトライアルを使いつつ仕上げるタイプである。馬券を買う人間からしたら後者のほうがありがたい。ヘイローの3×4がある。秋デビューから当然、クラシック。



2.○外リアライズトロイカ/牡/栗毛/07.5.09/栗東森秀行

 2位に一発長打を狙ってキングマンボ産駒をチョイス。というか、昨今の外国種牡馬について全然把握できておらず、まあ、ある程度知っているのがキングマンボくらいしかいないのだ。昨年度一番よく走った外国産馬はおそらくブレイクランアウト(父スマートストライク)だろうが、そのスマートストライク自体どういった血統背景の持ち主なのかさっぱりわからん。カーリンやフリートストリートダンサーを思い浮かべ、結局のところダート血統かと思っていたし。そういう状況であるから、早めに外国産馬を選んでおきたかったのが2位に指名した理由。

 POの本質からは少し乖離するが、調教師森秀行について記したい。森といえば、関西屈指の名門厩舎であり、10年程前は関東の藤澤和雄と並んで、それまでの調教師像の潮流に飛躍的な転換を提起した人物のひとりである。森によるモーリスドゲスト賞、藤澤によるジャックルマロワ賞の2週連続海外G1制覇で、その機運はピークを迎える。しかしながら、現在は藤澤=森チルドレンである角居、松田国らの活躍が目覚しい一方、池江パパや松田博資ら定年間近の伯楽連中も元気がいい。その状況下で、リーディングを突っ走ってきた藤澤も条件戦で何とか勝ち星を稼いでいるという印象を免れないし、森に至っては、久しくリーディング争いに加わっていない。その原因について、最も研究しているのは森本人だろうが、小生も少し検証してみたい。


 全体のパイが決まっている以上、若手の台頭により勝ち星が落ち込むということは、何も競馬に限ったことではないが、藤澤が伸び悩んでいる理由は実に明快で、サンデーサイレンスの死亡と外国産馬の不振である。この2点は藤澤にとって大事件であった。内国産馬全盛に時代を迎えた今日にあっては、藤沢は依然としてその取り扱いに戸惑っているようであるし、世界同時不況下で外国産馬を買うメリットは低下している。藤澤厩舎に所属した馬を獲得賞金順に並べてみると、サンデーサイレンス産駒と外国産馬しかいない。それら以外の馬を探してみると、タイキマーシャル(父ダンスオブライフ)まで下がらないと見つからないし、内国産馬となるとキリスパート(父メジロティターン)になる。これまで多くの外国産馬の成績を残して来た藤澤であるが、新鋭の山本英氏と多田レーシングマネージャーが持ってくる馬は、既に日本の馬場適性がないと実証されたような種牡馬、例えば、ストームキャットであり、サドラーズウェルズであり、エーピーインディであり、モンジューであるから難しい面はある。この点は藤澤本人も嘆いていた。さて、森も同様に外国産馬の扱いに関しては、他の調教師よりも秀でた調教師だと思う。他方、森はサンデーサイレンス産駒の育成に戸惑った感のある調教師である。確かに、準3冠馬エアシャカールを育てたことは大きな功績だが、調教師として実績を挙げ、サンデー産駒を中心とした良血馬がぞくぞくと入厩してきたものの、それと反比例する形で成績が落ち込んだ。例えば、ゼンノロブロイの弟グランデグロリア、フサイチエアデールの下、ゴーゴーサイレンスは獲得賞金0である。また、社台が20000万円で募集したダンシングオンも獲得賞金は10000万円に満たず、要するに、森は高額馬を走らせることができなかったのだ。森の著書『最強の競馬論』で「1000万の馬を10頭よりも、10000万の馬を1頭のほうを(馬主に)おすすめする」みたいなことを書いていたと記憶しているが、何とも皮肉な結果である。逆に言うと、森はマイナーな血統、決して一流とは言えない血統を走らせることに関しては、相当長けているという印象を受ける。戸山為夫から引き継いだレガシーワールド(父モガミ)でJC制覇。その他、フジヤマケンザンドージマムテキトーセンダンディ等。そもそも「鍛えて最強馬を作る」がポリシーであった戸山の門下生である森は、ムチャクチャ血統がいい馬よりも、微妙な血統を走らせることに真骨頂があるように思う。さて、森もまた高齢まで馬を走らせるタイプの調教師である。その点で藤澤とは対をなす。G1馬、ノボトゥルーを10歳まで走らせたのを初め、先述のドージマムテキロイヤルキャンサーも10歳まで走った、あるいは走っている。つい先日引退させたスウィフトカレントも8歳だった。確かに、高齢になり成績が著しく低下してきたら引退させたほうがいいし、心情的に10歳近くまで走らせるのは可哀想な気はするけれども、競走馬としての能力を持続させる、競走馬人生を伸ばすというのは、サラブレッドが進化と淘汰そのものの存在である以上、しなければならないことだと小生は考えている。そういう意味において、最近成績が芳しくない森には巻き返してほしいし、今年は勝ち星こそ少ないが、ミッキーペトラゴールデンチケットをクラシックに乗せたのは評価できる。特に、中央未勝利のゴールデンチケットをダービーに出走させたのは、早い段階から地方競馬の交流競走を使ってきた森ならではの裏技であろう。



3.ヤマカツハクリュウ/牡/芦毛/07.2.17/栗東松元茂樹

 父はクロフネ。母ヤマカツリリーは同期のスティルインラヴ、アドマイヤグルーヴの陰に隠れてしまいがちだが、競走馬としての能力はかなり高かったと思っている。というのも、フリーズレビューに勝ち、桜花賞でワンパンチ足りなかった馬だから、2400mになるオークスはプラスにならないと考えていた。そこで4着なのだから上々と言うべきだろう。やや成長力に欠けた部分はあったけれども、クロフネとの配合はむしろPO向きで仕上がりが早そう。また、母父がディンバーカントリーになり、芝でダメだったら、最低でもダートで2勝は見込んでいる。そういった意味で、この馬が外れるとは思っていない。



4.○父グランクロワ/牡/栗毛/07.1.29/栗東藤原英昭

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競走実績十分の若手繁殖が、素晴らしい牡馬を送り込んできました。首差しは細めですが、伸びやかな背のラインや深めの胸のつくりは走る父の産駒の共通項です。繋は長さ・角度ともに余裕があり、球節の沈下も十分で、これがバネの力を溜め込む仕組みを作りだして、力強い推進を生む原動力となっています。中距離以上の芝レースできっちりと折り合った状態で爆発力を蓄え、勝負どころから一気に加速して突き抜けるような戦法を得意として、次々に勝ち進んでいく姿を想像しています。デビューは中距離戦が多く組まれる秋頃が目標で、500kg程度での出走を想定しています。

 注目のスペシャルウィーク産駒からは、母マルバイユの本馬をチョイス。上記は社台のHPより。どんだけ褒めてんねんって話ww 募集金額が6000万円だから、期待の高さをうかがわせる。姉貴(父ダンスインザダーク)は、全く走っていないが、スペシャルウィークで激変の可能性がある。マルバイユ自身、社台の吉田照哉氏の所有馬として、フランスのG1アスタルテ賞に勝つなど、通算11勝の実績を誇る。母の父のMarjuは、日本でもおなじみのインディジェナス、ヴィヴァパタカ他G1馬は輩出。母系はやや不明な点も多いが、ノーザンダンサー系とサーゲイロード系の組み合わせは日本競馬に合わないはずがない。藤原英昭厩舎も近年ではリーディンングを争えるまで大きくなってきた。今年はジェルミナルがクラシックを賑わせたし、タスカータソルテサクセスブロッケン、ロードアリエスを牡馬クラシックに乗せたあたりも評価に値する。最低でもダービー出走。



56シチー氏と重複のため取り消し5.○父エクセルサス/牡/栃栗毛/07.4.30/栗東石坂正

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昨年人気を集めた兄に負けず劣らずの好馬体の持ち主です。父に似てやや線が細く感じるスッキリした馬体は、平均より大柄であるもののバランスが整っており、肩周りと後躯の柔らかみのある筋肉の付き方はトップレベルと言っても大げさではありません。また、飛節の角度と繋の柔軟さをみれば、跨らずして乗り味の良さが伝わってくるほどです。これから夏を越すことにより骨や筋肉だけでなく、精神面でも大きく成長してくれることでしょう。父には自身がそうであったように広い競馬場を得意とする産駒が多く、本馬の大きなフットワークを見ればそれも納得、目指すは日本ダービーです。

 目指すは日本ダービーってww これもスペシャルウィークの産駒。個人的にはやや短距離色が濃く出るんじゃなかろうかと踏んでいる。まあ、コジーンってこともあるけど、何となくね。ただ、血統的な背景からすれば、2400mも守備範囲ってことになる。祖母はあのサクラローレルの母、ローラローラの名前も載っているいるし、ボールドレイディのファミリーからは、ジョリーザザ、すなわち、タイムパラドックスの母を輩出している。今春はサンデーレーシングが全部持っていってしまった感じで、繁殖の質、量ともに、最も充実しているのではなかろうか。石坂のところは、小生が京都で競馬をやっていたころは、あまりパッとしない、泥臭い馬が多かったが、サンライズペガサス以降、かなりレベルアップされた印象が強い。もちろん、スカーレットレディの子、ヴァーミリアンサカラートの活躍も見逃せない。その他、アロンダイトダイタクヤマトサンライズキングなど、クラシック路線とは無縁だった馬が目立つが、牝馬ではアストンマーチャン、ブルーメンブラッドらがクラシックに出走。超大物オーシャンエイプスが、大物じゃなかったこともあって、牡馬のクラシックに関しては、まだ有力馬を出走させるに至っていない。ラタフィアという厩舎ゆかりの血統で、これまた最低でもダービー出走。




5.○父ソリタリーキング/牡/黒鹿毛/07.4.11/栗東石坂正

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今や世界に向けて飛び出したこの牝系は誰もが知るところで、本馬の醸し出す気高い存在感は、自身もそれを理解しているように思えてきます。理想的に組まれた骨格をベースに偏りなく配置された張りのある筋肉や落ち着き払った立ち振る舞いは、なお一層の完成度を高める要素となっています。後躯をまとう良質の筋肉から繰り出される力強い蹴りは宙を飛ぶような走りを生み、柔軟性に優れた手脚の運びは見た目のイメージを裏切りません。芝向きの傾向が強く、兄たちがダートの王道を歩むのなら本馬はクラシックの王道を行き、燦然と輝くブラックタイプに新たな歴史を刻みます。

 エクセルサスが56シチー氏と重複したため、本馬に変更した。重複しないようには注意したけどね。しかしなんだね、他人の所有馬ってことになると、非常に走りそうな気がするものだ。他人のものが良く見えるってアレ(笑 キングカメハメハ産駒の本馬を選んだことで、自慢の「スペシャルウィーク3本柱」が崩れてしまった。「結〜指名に至らなかった馬たち他〜」にも記しているが、もちろん、他のスペシャルウィーク産駒も候補に挙がった。ただ、今年は極力リスクを回避したいため、本馬をチョイスするに至った。新馬、500万とダートを使えば、確勝だと思うのだが、キングスエンブレムのようにクラシックを意識したレース選択をすることを最も懸念している。たぶん、それは選んだ全ての人が思っているだろうww ダートでいいから早い段階で2勝すれば、自ずと道は開けてくる。石坂正は、たぶんそこまで頭の悪い調教師ではない(と勝手に思っている)。ただ、芝を使いたいっていう石坂の気持ちはわからんでもない。やはりこの母系で、最初からダート馬だと決め付けるにはあまりに惜しい。「もしかしたら芝でも」って調教師だったら多くの人が思うだろう。今まではアフリート、ヴァーミリアンキングスエンブレムと芝とダート兼用、もしくはダート色の強い配合で、実際に産駒もダート馬だったわけだが、キングカメハメハに変わり、どこまで芝に対応できるかってのは非常に興味がある。


 キングカメハメハについて少し触れておく。昨年度はネオユニヴァースと並んで期待された新種牡馬であり、フレッシュサイヤーラインキングでは1位を獲得したものの、その後やや伸び悩み、ネオに持ってかれた感がある。しかしながら、生産界や競馬ファンの期待値はもっと高いところにあると思う。トゥザヴィクトリーの産駒が60000万円で取引されたのは、その象徴的な、いわば「事件」であった。非サンデーであることの期待があり、現役時代の圧倒的なパフォーマンスと成長力の期待があり、そして、エルコンドルパサー後のキングマンボ直系としての期待がありと……。実際はネオユニヴァースロジユニヴァースアンライバルドを排出した一方で、キングカメハメハフィフスペトルくらい。正直ここまで差が出るとは、昨年の段階では思わなかった。というか、ネオが凄すぎるのだけれども……。また、フィフスペトルやスガノメダリストを見る限り、やや距離に制限があるような印象は、多くの人間が感じたことだろう。だが、小生はキングカメハメハの産駒がこのままずっと距離に制約のある馬タイプの送り込み続けるとは考えていないし、おそらく生産界も考えていないだろう。エルコンドルパサー種牡馬入りした当初はいろいろ言われた。曰く、「突然変異型の馬だから、産駒の能力は未知数」とか、曰く「インブリードが強すぎて、産駒にムラが出るだろう」とか、曰く、「短距離馬が中心になるんじゃないか」とか……。結果論で言えば、1200mの重賞勝ち鞍のあるアイルラヴァゲイン、ダートで一時代を築いたヴァーミリアン、3000mを超えるレースで開花したソングオブウインドエアジパングトウカイトリック等を排出し、まさしく「万能型」を強烈に印象づけた。キングカメハメハはこの同じ父を持つエルコンドルパサーほどではないにしても、条件の融通は利くタイプの種牡馬だろうと思う。母系もノーザンダンサー系で、結局、BMSがラストタイクーンサドラーズウェルズかの違い。はっきり言って、キングカメハメハにとって2年目の今年が試金石になる。ここで大物候補を送り込まないと、ジリ貧傾向になる可能性はある。今の生産界は見限るのも早い。



6.○父ラナンキュラス/牝/青毛/07.4.16/栗東矢作芳人

 ん〜、ファレノプシスの仔が残っているとは、やや見限られたか?これまで5頭の産駒(全て牝馬)を送り出してくたファレノプシスだが、現状は期待を裏切っている。ブルードメアサイヤーとしてのブライアンズタイムの評価もやはり難しいところがある。これだけ長きにわたって、リーディングサイヤーの争いに加わっているブライアンズタイムならば、BMSの成績はもっと上位に肉薄してきていいはずだ。今のところ、ブルーコンコルドサンライズペガサス、あと勢いのあるところではエスポワールシチー等。やはりダート馬が多い。産駒の活躍馬は牡馬が多く、牝馬となると他にチョウカイキャロルシルクプリマドンナあたりしか思い浮かばない。これらも非常に期待されて繁殖入りしたが、活躍馬に恵まれていない(もしくは恵まれなかった)。ファレノプシスを含め、チョウカイキャロルシルクプリマドンナサンデーサイレンス、もしくは直系種牡馬と交配するケースが多く、他の組み合わせによる相性を実証できなかったのは不幸なことだろう。また、一説にはHail to Reasonのクロスがあると走らないと言われているが、タイキシャトルタイキブリザードブルーコンコルドカワカミプリンセスアサクサデンエンらがいるから、あまり説得力のない言説である。さて、ファレノプシスの不幸は、もっと別のところにあるような気がする。サンデーサイレンスの仔、スパンゴールドとティンクルハートは母と同じ浜田光正厩舎に所属した。この浜田って調教師がやはり信用おけなかった。ビワハヤヒデビワハイジという活躍馬を育て上げたけど、成績だけを見れば年間平均10〜15勝の弱小厩舎。決して褒められた腕の持ち主ではなかった。熱のあるビワハイジ桜花賞に出したりww そして、ファレノプシスの子供が入厩してきた頃は、既に引退を間近に控えた老兵であり、実際、04年は0勝、05年は11勝も、以降引退するまで1桁勝利にとどまった。論功行賞の、いわば「お情け」であったと言っていい。サンデーが死亡し、05、06年は直系のダンスインザダークと交配。今ではダンスインザダークはPO向きではないと語られているが、その当時、ダンスインザダークバブルが起こったのも事実である。デルタブルースによる菊花賞メルボルンCの制覇、ザッツザプレンティ菊花賞制覇とJC2着。また、層の厚さも示し、ヒシミラクルの勝った天皇賞では、ダイタクバートラムツルマルボーイファストタテヤマタガノマイバッハらが人気を形成、後にザサンデーフサイチが49000万をはじめ、軒並み産駒が高額で取引された。ファレノプシスはいわばそのバブルの被害者である。異なる配合を試していたら......と思わずにはいられない。そして今年は満を持してスペシャルウィークの仔が登場。また牝馬だが、これまでとは違ったタイプになりそう。厩舎も今もっとも旬な矢作厩舎で、ようやくここから繁殖牝馬としてのファレノプシスの名牝ロードが始まる。



7.ヴォイスメール/牡/黒鹿毛/07.3.24/栗東中村均

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小柄ながら体型はスッキリとして好感が持てます。青草を食べるようになって良質の筋肉が養われ、順調な成長曲線を描いています。今後も昼夜放牧を重ねることでひと皮剥けて、さらに騎乗鍛錬を課すことで進化を遂げ、見るたびにこちらの印象が変わる、そんな頼もしい成長を見せてくれそうです。サンデー繁殖と父との配合は地力に満ちた産駒を送り出す傾向が強く、本馬も芝・ダート問わず先行力を活かして速い馬場から渋い馬場まで堅実にこなしてくれそうです。長い年月をかけて枝分かれしても勝ち馬を送り続ける母系の底力に支えられ、早期デビューから、その力を長く持続してくれそうな良駒です。

 グラスワンダー産駒では、この馬ともう1頭、金子真人HDの持ち馬で母エイプリルヒロインと非常に迷った。ただ、金子の馬はまだ厩舎がはっきり決まっておらず、こちらのほうが先立つものがあるだろうと判断した。一応、グラスワンダーの子供が走る条件として、1.牡馬である、2.母父がサンデー、3.母が比較的若い、の3点にだけ注目した。スクリーンヒーローセイウンワンダーサクラメガワンダーはいずれもこれに当てはまる。本馬ヴォイスメールも母ヒーリングヴォイスが7歳の子供であり、母系にノーザンテーストが入っており、スクリーンヒーローと同じ。またファミリーにはダイワレイダース、サイレントセイバーらがおり、一応、走る下地は揃っている。厩舎は中村均。代表馬はマイネルセレクトだが、他に朝日杯の勝ち馬マイネルマックス、ダービー2着のボールドエンペラー、現役ではマイネルハーティーがおり、レース数を使うタイプの調教師である。



8.○父ハッピーディレンマ/牝/栗毛/07.3.27/美浦国枝栄

 もう1頭の牝馬金子真人HDの持ち馬。父アグネスタキオン、母ハンターズマークで、セレクトセールで4600万の値がついた。関東馬はあまり獲りたくなかったものの、国枝だったら別扱い。祖母はマンファスであり、キングカメハメハがいる血統。母親自身は未出走だったが、血統的は裏付けは十分である。今年度はアグネスタキオンの扱いってのがひとつポイントになると思う。昨年はタキオン一色の年になったけれども、2年前はやや情勢が違う。産駒数も107頭まで減った、いわば谷間の年。果たしてどうなる?関東で言えば、藤沢か国枝くらいしか信頼できない。久保田や尾形も頑張ってはいるものの、安定して勝ち星を挙げられるのは両者だけ。金子と国枝の組み合わせだったら、以前小生が獲得したピンクカメオと同じコンピ。もう1度G1の夢へ。



9.○父レリックレーヌ07/牡/鹿毛/07.2.21/美浦大久保洋吉

 一昨年、そして昨年とシンボリクリスエス種牡馬としての能力について量りかねていた。頭数からいったら、もう少し活躍馬が出てもよいと考えていたからだ。ただ、2年目の産駒からはアプレザンレーヴサンカルロ、リクエストソングらをは輩出し、初年度のモンテクリスエスサクセスブロッケンも成長曲線を描いている。今年は3年目ということもあり、産駒の数が50近く減少するが、一応、小生の中で種牡馬シンボリクリスエスのイメージが出てきたものだから、1頭チョイスしてみた。BMSがサンデーってのはいわば王道。母系も優秀で、タガノテイオーや、小生が5年前に指名した、タガノアイガーらがいる。ノーザンダンサーとミルリーフの血を引く母系は、まさに近代競馬の礎の縮図。まあ、シンボリクリスエスなら他にも選択肢はあったけれども、何でも大久保洋が臼田に「買ってもらった(6800万)」というほど惚れ込んだらしい。大久保はハイアーゲームで獲得できなかったダービーを、臼田はリーチザクラウンの雪辱と2度目のダービー制覇を目指す。



10.○父○新マチカネドウドウ/牡/青毛/07.4.16/栗東/藤岡建一

 新種牡馬の1頭は悩みに悩んだ。やはり昨年より層は薄いし、地味は印象があったからだ。外国産と新種牡馬を兼務させることも一時期考えていたが、ただえさえよくわからん外国の、しかも新種牡馬なんて最初から1頭捨てることになると思い、やめた。もちろん、ゼンノロブロイアルカセットストラヴィンスキーも考えてはみた。ただ、ゼンノロブロイって競走馬はあまり評価してないのよね。結局、シンボリクリスエスには、おそらく10回対戦しても9回負けただろうし、5歳時に未勝利だったのも、少しポイントが下がる。また日経賞京都大賞典などの取りこぼしもいただけない。これだけSS直系種牡馬がいる中で敢えてチョイスする意味があるだろうか?と疑問を持った。アルカセットは日本の馬場に最も対応した外国馬の1頭と言っていいだろう。そういう意味では、ゼンノロブロイより成績を残すかもしれない。ただ、小生は2位でキングマンボの産駒をゲットしているため、これまた敢えてアルカセットを獲る意味がわからなくなった。で、アドマイヤコスモス(父アドマイヤマックス×母アドマイヤラピス)でほぼ決まりかけていた。ラピスの子供は男馬のほうが走るし、いわゆる一流種牡馬より、アドマイヤベガフォーティナイナー(と言ってはかなり失礼。小生はフォーティナイナーをサンデーやトニービン級の大種牡馬だったと思っている)など、少し意外な配合のほうが走る傾向にある。ただ、最後に踏みとどまったのは、近藤利一が心底嫌いだから。やはり、ここが最大の焦点だった。母のバーシャからは、今のところ大物は出ていないが、性能の高さを垣間見せた馬はいた。BMSチーフズクラウンになり、アグネスデジタルディープスカイゴールドティアラらを輩出。また、ファミリーには95年の安田記念馬、ハートレイク(父ヌレイエフ)がおり、本馬は名マイラーへ成長する後ろ盾は強固なものがある。異色のサンデー産駒、デュランダルでこれまでと異なる産駒であることを期待。