:富士Sに係る予想




重苦しい怖ろしい夢のなかで不安が最高潮に達したその瞬間に、ほかならぬこの不安それ自身が我々も目覚めさせてくれる、――かくして夜のかの一切の魑魅魍魎は退散する。それと同じことが人生の夢の中でも起るのである、――不安の最高潮が我々にこの夢を破ることを強いる時に。 ショーペンハウエル『自殺について』


 このレースは毎年楽しみにしている――。



 府中牝馬Sが後ろ2頭で決したことで、何だか東京の馬場が「差し有利」の論調が支配的だが、条件戦を検証してみると、そうは言えない。力のある馬は先行して残っているし、力のある差し馬はしっかり台頭してきている。府中牝馬のペースが異常に速かったことを鑑みると、あのレースが特別あって、馬場の傾向が1週間で変化したとは思えない。数字だけを見ても、毎日王冠の週と先週はほとんど変わっていない。とにかくタイムがこれまた異常はほど速く、ここの32秒台決着は必至だろう。




 3歳馬が来る条件は、古馬との対戦経験があり、且つ目処のつく成績だったこと。1600mになって3歳馬が来たのはマイネルシーガルのみ。シーガルは前走の京成杯AHで3着(1番人気)で、目処がついたと言っていい。一方で、スズカフェニックスマイネルレコルトテレグノシスメテオバーストマイネルソロモンらが古馬未対決でここに挑んだが最高で3着まで。今年はケイアイライジンの他、レッドスパーダストロングガルーダ、ティアップゴールド、サンカルロが参戦。特にレッドスパーダはマイルC2着と底を見せていないということで人気になるそうだが、ここは敢えて消してみる。


 唯一古馬と対戦があり、4着だった京成杯AHの内容が濃かったケイアイライジンがここで台頭。弥生賞プリンシパルS→ダービーと使って休み明け距離短縮、しかも高速馬場という過酷な条件下で抵抗してみせた。前々日オッズではかなりの金額が入ったと思われる人気だが、当日はもう少しは落ちるだろう。



 更にその上を行くのがサイレントプライドだ。この馬に関しては「ピカレスクコートに毛が生えた程度」という失礼な評価をしてきたわけだが、この「毛の生えた」部分がなかなか曲者で、条件さ揃えば走ってくる。58キロでも、もっとやれてよかったと思う反面、不良馬場の東京新聞杯の除けば、0.3〜0.4秒内で走破しているから、着順が伴っていないだけで、この馬は安定して力を発揮しているとも言える。今年の中では一番条件が揃った思う。



 三番手評価はライブコンサートにした。間隔を明けた馬が来ないのがこのレースの特徴

で、過去幾多の休み明けの馬が沈んで行ったことを考慮し、関谷記念からのライブコンサートよりも、秋1回使ったファルケを上位と見ていた。しかしながら、昨年でその傾向は崩れてしまった。ライブコンサート重勝こそないが、昨年のサイレントプライドとほぼ互角の戦跡を残している。他方、1600万から昇級してきた馬は通用していない昨今の傾向を鑑み、ライブコンサートを上位にした。32秒台の時計は持っていないが、都大路Sで33.0で走っているのだから言うほど心配じゃない。



 大賭けの期待はナスノストロークの他にはおるまい。やや間隔が開いたから1回は様子見とも思ったが、涼しくなってこれば成績も上がってくる。マイネルスケルツィは3着候補まで。