論考

:ナリタタイシンの進路を探せ

神秘的な説明。――神秘的な説明は深遠だとされている。だが実際のところ、そうした説明はまだ表面的だとさえも言いかねるものだ。 ニーチェ『悦ばしき知識』126 過去20年の皐月賞において、 4角10番手以降で勝った馬は93年のナリタタイシンしかいない。 ディ…

:綿矢りさに関する覚書

巨匠の作品は、星であり、私たちのまわりを昇ったり沈んだりする。だから、いまは沈んでしまっている偉大な作品にも、かららず時がめぐってくるだろう。 ウィトゲンシュタイン『哲学的断章』よりMS 111 194:13:0:1931 綿矢は熱狂的な支持者がいる一方で、ア…

:浅野いにお『虹が原ホログラフ』――自殺を如何に表現するか――

虹ヶ原 ホログラフ 作者: 浅野いにお 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2006/07/26 メディア: コミック 購入: 9人 クリック: 185回 この商品を含むブログ (374件) を見る 『虹が原ホログラフ』研究ノートと称したエントリを書いたが、 http://d.hatena.ne.…

:浅野いにお『虹が原ホログラフ』の研究ノート2

プロローグ1 一匹の蝶が飛んでいる。背景は真っ白で、どこを飛んでいるのかはわからない。(a-1) 双子の赤ん坊を俯瞰している。誕生まもなくであり、泣いている。(a-2) 再び一匹の蝶。(a-3) 開かれたノート。びっしりと文字と図が書かれている。(a-4…

:浅野いにお『虹が原ホログラフ』の研究ノート1

虹ヶ原 ホログラフ 作者: 浅野いにお 出版社/メーカー: 太田出版 発売日: 2006/07/26 メディア: コミック 購入: 9人 クリック: 185回 この商品を含むブログ (374件) を見る 浅野いにおの『虹が原ホログラフ』は、難解とされている。 確かに、1回読んだだけ…

:メガネの自由意志論――小生がメガネを愛し、メガネもまた小生を愛する関係――

「メガネ君」はバカにされて何ぼ メガネをめぐる表象は、近年劇的な変化を迎えるに至った。これまでメガネに付き纏っていたダサいという否定的なイメージから、「かっこいい」「かわいい」など肯定的なイメージに転換した。しかしながら、人生の74%をメガネ…

:長距離戦線における勢力図の現在

個性などというものは、はじめは醜い、ぶざまな恰好をしているものだ。 三島由紀夫『生徒を心服させるだけの腕力を』 長距離戦線を牽引してきたメイショウサムソンが引退し、また、ウォッカをはじめ、ダイワスカーレット、ディープスカイ、マツリダゴッホら…

:「アリスのカメラ」を求めて――銀塩最終世代の私風景――

ご機嫌如何ですか?寒くなりましたね。炬燵が恋しい季節です。話は変わりますが、あなたは写真が好きですか??――よかった、どうやらあなたとは友達になれそうです。観るのが好きな人…友達です。撮るのが好きな人…友達。でも小生、実際は友達少ないですどけ…

:新藤谷美和子論――あるいは『ゆきゆきて、美和子』

出来得れば、少年の門出から剛毅におのれの心身のバランスを統御出来るに越したことはない。そうしてその吹きつのってくる過剰な活力を、人間の調和的な生存の幸福の側にねじめけ得る人は仕合せだ。 檀一雄『火宅の人』 何が「新」なのかはわからない――。 そ…